コラム:エシカルタイルへの挑戦(3)

これまでの2回で、私たちTNコーポレーションがタイル製造における環境課題と向き合い、挑戦と失敗を繰り返してきた軌跡をご紹介しました。
・【第1回】「タイルはエシカルか?」~製造現場から見えるリアル
・【第2回】「できなかったこと」の記録 ~製造現場の試行錯誤
今回はそれらの試行錯誤のひとつの集大成とも言えるタイル、『リクレイタイル』について詳しくご紹介します。
【第3回】
リクレイタイル ~製造現場の課題と挑戦
◆釉薬という原料へのジレンマ
タイルの魅力を語るとき、欠かせないのが「釉薬(ゆうやく)」の存在です。 日本製のタイルは、この釉薬による豊かな表情で国内外から高い評価を受けています。


ところが…タイルは製造工程上スプレーを使って釉薬を塗布しますが、この方法はタイルからこぼれる釉薬も多いため“使い切れなかった釉薬”が必ず発生します。釉薬には銅やコバルトなどの金属酸化物が含まれるためそのまま廃棄することはできず、これまでは原料業者が販売量の一定比率を上限に回収してリサイクルされてきました。
しかし、生産の少ロット化と多品種化により、ブース洗浄の回数が増え、洗い流される釉薬の量も増加。回収比率の上昇は業者の処理能力の限界を越え、ついに行き場を無くした余剰釉薬が蓄積され始めることになりました。


この問題を解決しなければ、日本のタイルは「美しさ」という最大の武器を失いかねない――。
そんな危機感が、リクレイタイル開発の原動力でした。
◆ タイル産業の未来を守る挑戦
業者の回収に頼ることなく、再利用する方法の摸索が始まりました。製造現場で思いついたのは、循環型坏土への組み込みではなく、「余剰釉薬そのもの」をタイルの原料として再利用できないかというアイデア。その実現には2つの技術を要しました。
1.耐火度調整技術の開発
釉薬の残留物には様々な不純物が混ざるため、製品として発色を安定させるのは不可能に近い状態です。
そのため顔料などで色をととのえ、釉薬ではなくタイル素地の原料としての利用を試みました。しかし、単に乾燥させて坏土に混ぜるだけでは耐火度が低く、高温焼成時に溶けて流れてしまいました。

そこで、従来のタイルの素地に使われるような別の材料を添加することで、耐火度を上げる実験を繰り返しました。
度重なるボタンテストを繰り返し、その都度原料の種類や調合を細かく変えながらベストな状態を探ることで、ついに焼成時の溶けだしを抑えることに成功します。




しかし、これだけではタイル成形には不十分でした。
2.二層成形技術の採用
焼成後も形を保つことはできても、高温でガラス化する釉薬を主体とした原料だけでは、焼成の際に「さや」と呼ばれる窯の棚板にくっついてしまいます。このままでは、タイルとして生産することはできません。
そこで私たちは、通常の磁器タイルの原料を下層、耐火度調整後の再生原料を上層と、二層に分けて機械に投入してからプレスする「二層成形」を採用しました。
これによって、適度に溶けだし冷え固まった「溶岩」のような独特な表情を保ちつつも、裏側はしっかりとタイル本来の機能を持たせることに成功しました。




◆ 美しさの新しいかたち
「環境配慮型のタイル」という様々な取り組みが常に抱える課題。それは「タイルとしての魅力」との両立でした。
タイルはあくまで空間装飾のためのパーツのひとつ。ただ「環境に良いから」というだけではなく、施工後に美しさが伴わなければ、誰も使用したいとは思えません。

リクレイタイルの表面を埋めるクレーターのような凹凸は、ムラのある原料を使ったからこそ生まれた、これまでのタイルには無い魅力です。その独創性はリサイクルの観点を抜きにしても、1つのタイルとして十分な美しさを有していると自信を持って言えます。
空間創造を助ける「タイルとしての魅力」と、タイル産業を守る「原料のサイクル」。この2つの価値で日本のタイル産業を支え続けるため、現在TNコーポレーションで二層成形の特許も申請しています。さらに、リクレイタイルは現在もさらなる改良を重ねており、次は二層に分けることなく100%再生原料だけで成形・焼成できる、フルボディのタイル開発にも挑戦をしています。








◆ 持続可能な「タイルづくり」へ
エシカルな製品とは、環境に配慮するだけでなく、 作る人・使う人・社会全体にとっての“心地よさ”を含むと私たちは考えています。
今、変革の時を迎えているタイル産業。私たちは、誇りある「やきもの文化」を、次の世代に繋げる責任があります。
リクレイタイルはまさにその第一歩として、 これからもTNコーポレーションは未来にやさしいタイルづくりを続けていきます。
▶ 最後に
全3回にわたりお届けした「エシカルタイルへの挑戦」。最後までお読みいただきありがとうございました。
TNコーポレーションでは、リクレイタイルをはじめ様々なタイル開発の取り組みをともにおこない、使用までをご検討いただけるパートナー企業様を募集しています。
わたしたちの取り組みに興味をお持ちいただけましたら、ぜひ担当者までお気軽にご連絡ください。
エシカルタイルへの挑戦
【第1回】「タイルはエシカルか?」~製造現場から見えるリアル
【第2回】できなかったこと」の記録 ~製造現場の試行錯誤
【第3回】リクレイタイル ~製造現場の課題と挑戦