マリン郡庁舎とマイルハイ・タワー

<夢のある建物>

今回は番外の番外とでも言いましょうか、夢のある建物をご紹介します。
アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ近郊のマリン郡(Marin County)のシビックセンターです。
この作品はいろんな意味で象徴的な作品です。
まずライト90歳の時(1957年)の作品で、なおかつ遺作であるということ。
ライト唯一の公共建築であるということ。
そしてなによりも90歳にしてその創作意欲の並外れたエネルギーと、未来への夢を感じさせる建物だと言うことです。

普通の人であれば人生の最後を迎える時となれば、大向こうを唸らせるようなものでなく、枯れた味わいが表面に出てこざるを得ない地味なものですが、ライトの場合は違います。老いて益々盛んというか、老いて尚且つ新しさを追求して已みません。ライトはこの建物を設計してその2年後に永眠しています。

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この建物のデザインモチーフは円ですが、その出発点は帝国ホテルに始まります。
由来、円のモチーフはライトにとって生涯のテーマであったことは間違いありませんが、この最後の作品でそれを完璧なまで追求しています。私はこの建物のアプローチ道路から見たエントランス部分の大アーチと、遠くから見た屋根のデザインが好きです。

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バングラデッシュ国会議事堂

バングラデッシュ国会議事堂

円から派生したアーチは人類の構築した構造物のなかで最も古くしかも美しい形ですが、このマリンカウンティー庁舎のアーチほど見事なものはありません。近代建築ではこのアーチに匹敵するのは、ルイス・カーンのバングラデッシュ国会議事堂しか思い当たりません。

Unicode

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円をモチーフにした屋根の軽快なデザインと透き通るようなブルーは見事に調和して見る者を飽きさせません。このようなデザインは世界を見渡しても公共建築では唯一無二のものではないでしょうか。
そこにライトが始めて手がけた公共建築に対する考え方が如実に表されていて愉快な気持ちになります。

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ところでこの建物、アメリカ映画の「ガタカ」(1997年)でその主要な舞台として使われています。
この映画は人間の遺伝子操作をテーマにしたSF映画ですが、未来社会の建物として使われるほどこの建物が新しさを持っている証明とも言えます。しかも映画が製作された年の40年も前の建築です。天国のライトもしてやったりと、ほくそ笑んでいるのではないでしょうか。

エントランス天井部分

エントランス天井部分


<マイルハイ・タワー>

話は飛びますが、オイルマネーで潤っている中近東のドバイ、サウジ等で超高層建築が競って建てられていますが、とうとう1600m(1マイル)高さの建築計画も発表されたようです。
しかし今から50年以上前の1956年、ライトは「マイルハイ・タワー」(1609m高さ)という、とてつもない計画案を発表しています。マリンカウンティー庁舎の1年前、ライト89歳の時です。
イリノイ州のために提案された建物で、居住階とオフィス階があり、居住者は55,000人、建物外からオフィスへの通勤者は75,000人、合わせて13万人が入ると言う壮大なものです。

ライト自筆のパース図

ライト自筆のパース図

ITEM

  1. モット
  2. 雫 [しずく] 
  3. 大河 [たいが]
  4. チャット
  5. 断片
  6. 式部【しきぶ】
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